二酸化硫黄(SO2)は火山噴火で放出される、(水、二酸化炭素に次いで)最も一般的なガスの一つです。 気候へ影響を与える可能性があるため、地球全体に関わるスケールで重要な問題となります。 局地的なスケールでは、二酸化硫黄はガスの形態で健康に悪影響を及ぼすのと同時に、酸化して 硫酸エアロゾル の形態になるので危険です。
特性
曝露の影響
既存のガイドライン
火山における事例
参考文献
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特性
二酸化硫黄(SO2)は、無色の気体で、独特の刺激臭があります。 この臭いは、個人の感受性によって、認識できるレベルが異なります。 しかし、一般的には、0.3-1.4 ppmで感知されるようになり、3 ppmで容易に認識されるようになります。 (Baxter, 2000; Wellburn, 1994)。 二酸化硫黄は不燃性で、爆発性がなく、比較的安定です。 周囲の大気より2倍以上密度が大きく(25℃、1気圧で2.62 g L-1(Lide, 2003))、 水に非常に溶けやすい性質があります (25℃で85 g L-1 (Gangolli, 1999))。 湿ったものに接触すると、二酸化硫黄は硫酸(H2SO4)になり、 目や粘膜、皮膚に強い刺激を伴った影響を与えます(Komarnisky et al., 2003)。
典型的な場合、発生源の風下10km程度に相当する希薄な火山噴煙中の二酸化硫黄の濃度は10 ppm以下です。
ちなみに、一般の対流圏大気中の平均的な濃度は、0.00001-0.07 ppmです(Brimblecombe, 1996; Oppenheimer et al., 1998)。
このガスが6時間から24時間程度の半減期を持つと仮定すると、 1日から4日後に低層大気に存在するのは放出されたガスの約5%だけということになります (Brimblecombe, 1996; Finlayson-Pitts and Pitts, 1986; Porter et al., 2002)。
曝露の影響
二酸化硫黄は、目、のど、気道に刺激を与えます。 二酸化硫黄にさらされ過ぎると短期的な場合、炎症や痛みを引き起こし、 目が赤くなる、せきが出る、呼吸がしづらい、胸が苦しいなどの症状が表われます。 喘息の方は特に二酸化硫黄の影響を受けやすく(Baxter, 2000)、 0.2-0.5 ppm程度の低い濃度で発作を起こすことがあります。 喘息を有する火山学者は、同僚が影響を受けるよりもかなり低い濃度で、体調の異変を認識することが起こりえます。 低濃度(1-5 ppm)に長時間または繰り返しさらされることは、心臓や肺の持病がある方にとっては、 危険なものとなりえます。 健康への影響は、異なった研究者や研究機関によって、様々な濃度についてまとめられています。 下の表には、健康被害のしきい値に関するこれらの調査の一部を紹介しています。
二酸化硫黄を吸い込んだ場合の健康への影響
(Baxter, 2000; Nemery, 2001; NIOSH 1981; Wellburn, 1994)
曝露限界値(ppm) | 健康への影響 |
---|---|
1-5 | 健康な人が運動や深呼吸の際に呼吸器系に影響を受ける閾値 |
3-5 | ガスにすぐ気づく値。安息時の肺機能の低下と、気道抵抗の増加 |
5 | 健康な人における気道抵抗の増加 |
6 | 目、鼻、のどへの瞬時の刺激 |
10 | 目、鼻、のどへの刺激の増加 |
10-15 | 長時間曝露に関する毒性の閾値 |
20+ | 継続的な曝露後の麻痺や死亡 |
150 | 健康な人が数分だけ耐えられる最大濃度 |
高いレベルの二酸化硫黄濃度が持続する環境は、子供に様々な健康被害を引き起こすことが明らかになっています(Ware et al., 1986)。
しかしながら、桜島における研究では、子供の喘息の有病率と火山ガスへの長期間の曝露の間には相関が見られませんでした (Uda et al., 1999)
既存のガイドライン
1971年に、米国環境保護庁は、人々の健康に顕著な被害を引き起こしうる二酸化硫黄のレベルを24時間平均で2620µg m-3 (1 ppm) と設定しました。 粒子状物質やほかの微量成分も存在するときは、このレベルは引き下げられます。 下の表には、二酸化硫黄に関する各国の環境ガイドラインならびに労働ガイドラインが掲載されています。 基準値が国ごとに大きく違うことが分かります。
二酸化硫黄に関する大気環境ガイドライン
カッコ内の値は、公表されているガイドラインの近似的な変換値です。
国/機関 | レベル (ppm) |
関連法律 | 注 | 文献 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
アルゼンチン | 1 | 2620 | 1時間 | 1973年 4月16日 |
Ley 20.284 | a | ||
0.3 | 780 | 8時間 | 1973年 4月16日 |
Ley 20.284 | a | |||
(0.027) | 70 | 1ヵ月 | 1973年 4月16日 |
Ley 20.284 | a | |||
チリ | 0.096 | 250 | 24 時間 | Primary | 2003年 3月6日 |
D.S. Nº 113/02 | 1 | b |
0.031 | 80 | 1年 | Primary | 2003年 3月6日 |
D.S. Nº 113/02 | 1 | b | |
中国 | (0.057), (0.191), (0.267) |
150 (i), 500 (ii), 700 (iii) |
1時間 | 1996年 1月 |
GB 3095-1996 | 2 | a | |
0.019), (0.057), (0.095) |
50 (i), 150 (ii), 250 (iii) |
24時間 | 1996年 1月 |
GB 3095-1996 | 2 | a | ||
(0.008), (0.023), (0.038) |
20 (i), 60 (ii), 100 (iii) |
1年 | 1996年 1月 |
GB 3095-1996 | 2 | a | ||
コロンビア | (0.573) | 1500 | 3時間 | 年2回以上は超えない | 1982年 1月11日 |
Decreto No. 2 | a | |
(0.153) | 400 | 24時間 | 年2回以上は超えない | 1982年 1月11日 |
Decreto No. 2 | a | ||
(0.038) | 100 | 1年 | 1982年 1月11日 |
Decreto No. 2 | a | |||
コスタリカ | (0.573) | 1500 | 3時間 | 年2回以上は超えない | Reglamento sobre inmisión de contaminantes atmosféricos |
a | ||
(0.139) | 365 | 24時間 | 年2回以上は超えない | Reglamento sobre inmisión de contaminantes atmosféricos |
a | |||
(0.031) | 80 | 1年 | Reglamento sobre inmisión de contaminantes atmosféricos |
a | ||||
エクアドル | (0.573) | 1500 | 3時間 | 年2回以上は超えない | 1991年 7月15日 |
Registro Oficial No. 726 | a | |
(0.153) | 400 | 24時間 | 年2回以上は超えない | 1991年 7月15日 |
Registro Oficial No. 726 | a | ||
(0.031) | 80 | 1年 | 1991年 7月15日 |
Registro Oficial No. 726 | a | |||
EU | (0.134) | 350 | 1時間 | 年25回以上は超えない | 2005年 1月1日 |
COUNCIL DIRECTIVE 1999/30/EC | 3 | c |
(0.048) | 125 | 24時間 | 年4回以上は超えない | 2005年 1月1日 |
COUNCIL DIRECTIVE 1999/30/EC | 3 | c | |
(0.008) | 20 | 1年 | 2001年 7月19日 |
COUNCIL DIRECTIVE 1999/30/EC | 3 | c | ||
日本 | 0.1 | 260 | 1時間 | 1973年 5月16日 |
d | |||
0.04 | 110 | 24時間 | 1973年 5月16日 |
d | ||||
メキシコ | (0.130) | 341 | 24時間 | 年2回以上は超えない | 1994年 12月23日 |
NOM-022- SSA1-1993 |
a | |
(0.030) | 79 | 1年 | 1994年 12月23日 |
a | ||||
(0.134) | 350 | 1時間 | 2002年 5月 |
4 | e | |||
(0.046) | 120 | 24時間 | 2002年 5月 |
4 | e | |||
英国 | (0.102) | 266 | 15分 | 年36回以上は超えない | 2004年 12月31日 |
The Air Quality (England) Regulations 2000 | f | |
(0.134) | 350 | 1時間 | 年25回以上は超えない | 2004年 12月31日 |
The Air Quality (England) Regulations 2000 | f | ||
(0.048) | 125 | 24時間 | 年4回以上は超えない | 2004年 12月31日 |
The Air Quality (England) Regulations 2000 | f | ||
米国 | 0.14 | 365 | 24時間 | Primary | 1990年 | NAAQS | g | |
0.50 | 1300 | 3時間 | Secondary | 1990年 | NAAQS | g | ||
0.030 | 80 | 1年 | Primary | 1990年 | NAAQS | g | ||
世界保健機構 | 0.175 | 500 | 10分 | 2000年 | WHO 2000 | 5 | h | |
(0.048) | 125 | 24時間 | 2000年 | WHO 2000 | h | |||
(0.019) | 50 | 1年 | 2000年 | WHO 2000 | h |
- 標準状態は、大気圧(1 atm.)、温度25℃である。
- (i) 特別保護をする高感度地域; (ii)典型的な都市ならびに田園地域; (iii)特別産業地域。
- 20℃、1013hPaで標準化。
- 0℃、1気圧での測定。ただし、硫酸ミストは除く。
- 疫学調査の証拠に基づく。
- http://www.cepis.ops-oms.org/bvsci/e/fulltext/normas/normas.html
- http://www.conama.cl/portal/1255/propertyvalue-10316.html
- European Commission Guidelines Website
- http://www.env.go.jp/en/lar/regulation/aq.html
- http://www.mfe.govt.nz/publications/air/ambient-air-quality-may02/index.html
- http://www.defra.gov.uk/environment/airquality/airqual/index.htm
- http://www.epa.gov/air/criteria.html
- WHO, 2000. Guidelines for Air Quality, World Health Organization, Geneva.
環境ガイドラインのまとめ
上の二酸化硫黄の環境ガイドラインの一覧は、各国のガイドラインには非常に幅広い範囲のものが存在することを示しています。
各国のガイドラインの違いは、ガイドラインの発行された年、現在の汚染レベルと将来の予測レベルに基づく現実的な基準設定、 基準を設定したデータ(例えば、疫学調査や実際の汚染レベル)によるものと説明することができます。
ガイドラインで用いられている平均時間は、10分(世界保健機構)から1年まで様々です。
下の表は、各平均時間についてガイドラインの値の範囲をまとめたものです。
二酸化硫黄の環境ガイドラインレベルの範囲のまとめS
平均時間 | 最小 (ppm) | 最大 (ppm) |
---|---|---|
10-15分 | 0.102 | 0.175 |
1時間 | 0.057 | 1 |
24時間 | 0.019 | 0.153 |
1年 | 0.008 | 0.038 |
二酸化硫黄の労働基準
カッコ内の値は、公表されているガイドラインの近似的な変換値です。
国/機関 | レベル (ppm) |
関連法規 | 注 | 文献 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
英国 | 5 | 13000 | 15分 | MEL | a | |||
2 | 5300 | 8時間加重平均 | MEL | a | ||||
米国 | 5 | 13000 | 15分 | STEL | 1994年 | NIOSH/ ACGIH | 2 | c |
5 | 13000 | 8時間加重平均 | PEL | OSHA規制 (29 CFR 基準) | 1 | b | ||
2 | 5000 | 8時間加重平均 | 1994年 | NIOSH/ ACGIH | 2 | c | ||
0.3 | (800) | 1時間 | ERPG-1 | 1989年 | 緊急対応計画基準 | d | ||
3 | (7900) | 1時間 | ERPG-2 | 1989年 | 緊急対応計画基準 | d | ||
15 | (39300) | 1時間 | ERPG-3 | 1989年 | 緊急対応計画基準 | d |
- 25℃、760mmHGでの体積ppm。
- http://www.cdc.gov/niosh/nmam/
- HSE, 2002. Occupational Exposure Limits 2002. HSE Books, Sudbury.
- OSHA Guidelines Website
- NIOSH Manual of Analytical Methods (NMAM®), 1994, Cassinelli, M.E. and O'Connor, P.F. (Eds.). DHHS (NIOSH) Publication 94-113, 4th ed. and/or http://www.osha.gov/dts/chemicalsampling/data/CH_268500.html
- AIHA Emergency Response Planning Guidelines Committee, 2002. Emergency Response Planning Guidelines 2002 Complete Set, American Industrial Hygiene Association, Fairfax.
多くの火山観測所は、独自の二酸化硫黄ガイドラインを用意しています。
例えば、日本の阿蘇山の火口では、二酸化硫黄のレベルが1分間継続して0.2 ppmを超えた場合、 もしくは瞬間値で5.0 ppmを超えた場合には、観光客は避難することになっています。
このレベルは、1990年代の火山ガスが関連した死亡事故を受けて、5分間で5ppm以上から引き下げられました (Ng'Walali et al., 1999)。
ハワイ火山国立公園は、USGSハワイ火山観測所と共同で、公園のスタッフと訪問客を守るために、二酸化硫黄への注意を呼びかける基準を2000年に設定しました(下表)。
2008年に山頂噴火が発生したのを受け、ハワイ島内のすべての機関は、環境保護庁との協議に基づき、下のPDFに記されている統一された注意喚起体制を採用しました:
http://hiso2index.info/assets/FinalSO2Exposurelevels.pdf
火山における事例
人体に有害な濃度の二酸化硫黄(SO2)は、多くの火山の風下で記録されています。 特に高濃度の事例は、継続的にガスを放出している次の火山の近くで、しばしば観測されています。
- ハワイ・キラウエア: 1996年の活動期に時折発生したガス増加イベントでは、観光客用の駐車場における二酸化硫黄の環境濃度が4.0 ppm (BGVN 21:01)まで上昇しました。 これは、米国の3時間の濃度ガイドラインよりも10倍近く高い値です。 1987年から2001年まで、二酸化硫黄の環境濃度がハワイ火山国立公園本部において 米国の24時間第一健康基準を85回以上も上回りました(Elias, 2002)。 人気が高い観光地でのこのような値が観測されたため、公園のための二酸化硫黄 ガイドラインが導入されました。
- ニカラグア・マサヤ:最近、活発にガスを放出しています。 1998年の3月から4月と1999年の2月から3月の時期に 最大44km離れた風下の地点で測定された二酸化硫黄の平均濃度は、0.002以下から0.23 ppm (約5-600 μg m-3)の範囲にありました(Delmelle et al., 2002)。 これらの測定の約30%は、世界保健機構(WHO)の24時間環境ガイドラインのレベルを上回っていました。 14km離れたラノ・パカヤ・リッジで測定された最大濃度は、0.6 ppmでした(Horrocks, 2001)。 2001年5月、サンチャゴ火口の縁で記録されたマサヤ火山の噴煙の二酸化硫黄の最大値は、 3.1 ppm (7950 μg m-3)でした(Allen et al., 2002)。 これらの濃度は、地域住民の健康に危険が及ぶ可能性があることを示唆しており、 地域の住民が、目の刺激や炎症、気管支炎、のどの痛み、頭痛の症状を訴えました。 マサヤ地域では、約5万人の人々が二酸化硫黄と噴煙によって引き起こされた水質汚染の危険にさらされていると推定されています。
- コスタリカ・ポアス:火山近辺の住民や研究者は、目やのどの痛みを何度も訴えています。 風下の人口密集地域では、二酸化硫黄の長期測定の平均濃度が最大で約0.28 ppm (730 μg m-3)を示しており、 短期測定では最大で0.3-0.5 ppmとなっています(Nicholson et al., 1996)。 1991年と1992年に観測されたこれらのレベルは、WHOの24時間環境ガイドラインの値を越えており、 15分値を超えた地域もあります。 ポアス火山の火口縁で計測された二酸化硫黄の最高値は約35ppmであり、 すべてのガイドラインのレベルを著しく上回るものでした。
- チリ・ビジャリカ:火口縁で測定された二酸化硫黄濃度は、13ppm(NIOSHの二酸化硫黄に関する15分の労働限界値に相当) をしばしば超えたことを示しました(Witter and Delmelle, 2004)。 夏の観光シーズンのピークには、1日に約100人の観光客がビジャリカ火山の頂上へ登ります。 これらの人々の多くが有害なガスにさらされていることになります。
- ニュージーランド・ホワイトアイランド:試験的な健康調査で二酸化硫黄の時間平均測定の結果が報告されました。 これによると、 噴気の風下に20分間いた人々は、6ppmから-75ppm程度の二酸化硫黄にさらされていました(Durand et al., 2004)。 これらの濃度は、短期労働曝露限界値を最大で15倍も超えています。
次の例のように、より爆発的な火山活動で、人々や都市が二酸化硫黄放出の深刻な影響を受けることがあります。
- グアドループ・スーフリエール: 1976年の噴火では強い二酸化硫黄臭が漂い、それに住民は関連する頭痛を訴えました(LeGuern et al., 1980)。
- メキシコ・ポポカテペテル: 長期間、活動を続ける火山の風下側正面にあたるメキシコ市では、火山からのガス放出の影響で、 二酸化硫黄濃度が0.08ppm (160 μg m-3)を超え続けてきました(Raga et al., 1999)。 これは、この都市の典型的な月間平均値の4倍以上に当たり、年および24時間の曝露基準として知られているほとんどのものを超えています。
- 日本・桜島: この火山は、近年、非常に活発な状態が続いており、風下の広い地域をいぶし続けています。 1980年の桜島町(桜島火山から約5km)における二酸化硫黄の1時間レベルの最大値は、0.84 ppmであり、日本の環境大気基準を超えていました(Yano et al., 1986)。 1985年の9月から1986年の2月では、桜島の測定局で測られた月平均の二酸化硫黄濃度0.015ppmから0.138ppmの範囲にあり、この期間の平均で0.079ppmでした(Kawaratani and Fujita, 1990)。 火山周辺地域における健康に関する疫学調査では、二酸化硫黄濃度と成人と新生児の気管支炎疾病率に正の相関があることが示されています(Shinkuro et al., 1999; Wakisaka et al., 1988)。
- 日本・三宅島: 2000年の秋に三宅島から放出された火山ガスが、南および南西の風によって本州に流され、100-400 km 風下にある地表測定局の多くで高い二酸化硫黄濃度が測定されました(e.g. Naoe et al., 2003)。 88 km離れた場所では、最大の二酸化硫黄地表面濃度は前年同時期には0.0028 ppmであったものが、約0.114 ppmとなりました(An et al., 2003)。 4.5 kmで記録された最大の1時間濃度は、0.945 ppmでした。 これは、日本の大気1時間基準値の9倍以上です。 この噴火は、3000万人以上の人々が住む東京首都圏の大気にも影響を与えており、都市部でガスの異臭を感じたという報告をした人もいました(Fujita et al., 2003)。 2000年の8月から11月にかけて、日本各地の623の大気測定局における二酸化硫黄レベルが、1時間大気基準値を超えました(Fujita et al., 2003)。
二酸化硫黄高濃度の距離による影響の変化の他の事例:
- ニカラグア・コンセプシオン: 1986年および1993年の火口からの二酸化硫黄の放出が、風下側8-10kmの地点で測定されました。その結果、居住域にもガスが広範囲に達していることが分かりました(SEAN 11:05; BGVN 18:03)。
- チリ・セロハドソン: 1991年10月11日の硫黄の噴気は、火山の西側斜面にあるフムラス・バレーで非常に強かったので、気分が悪くなり、嘔吐や意識不明を引き起こした住民が出ました(BGVN 16:09)。 (この噴気がどのような組成だったかは明らかではありませが、硫酸エアロゾルと硫化水素のどちらか、または両方が含まれていた可能性があります。)
- アラスカ・セントアウグスティン: 1976年2月1日の噴火による噴煙では、火山の近くで最大10ppmに達する濃度の硫黄ガスを含んでいました(調査に当たった研究者は、そのすべて二酸化硫黄と仮定しています)。 風下10kmでは1ppmあり、軽いのどの痛みを引き起こしました(Stith et al., 1978)。
- ヤヌアツ・ヤスール: 火口の縁の噴煙で、危険なレベルの二酸化硫黄が観測されました。 1988年9月には、ここでの噴煙内の濃度は3ppmと9ppmの間でした(SEAN 13:12)。 これは、労働大気基準の多くを上回っています。
- メキシコ・ポポカテペトル: 1997年2月の火口近くでの二酸化硫黄濃度は約3.8 ppm (10,000 μg m-3)でありました。 これは、NOISHの推奨時間加重平均の2倍です(Goff et al., 1998)。
- ニカラグア・テリカ: 1984年3月から6月には、火口からの硫黄に富む蒸気が火山の斜面を流れくだり、谷が高濃度の二酸化硫黄で充満されました。 硫黄臭は北東斜面でも報告されてます(BGVN 19:07)。
- フィリピン・タール: 1911年の噴火の際に、二酸化硫黄の強い臭気が観測され、これによって噴火による死者数が増加した可能性が指摘されています(Baxter 1990)。
n to visitors to protect those with asthma and respiratory diseases (Ng'Walali et al., 1999).
他の地域において、二酸化硫黄を放出する火山の近くに住む人々や働く人々が、知らず知らずのうちに ガスの危険にされされている可能性があります。 例えば、アゾレスの活動的なファーナス火山のカルデラ内部にあるファーナス湖での平均二酸化硫黄レベルは、0.115ppmと測定されています。 これは、観光客や現地の人々が噴気を調理に利用する地域で記録されたもので、1年基準としてリストに示されているどれよりも数倍高く、 ほとんどの1時間ならびに24時間基準値よりも高いものとなっています。 (同様にカルデラ内部にある)ファーナス村の中心部でのレベルは、0.070-0.085 ppmの範囲にありました(Baxter et al., 1999)。 これも、どの1年基準値よりも高いものです。
二酸化硫黄中毒に関連する事故として知られているほとんどのものは、日本の阿蘇火山で起きています(表参照)。 ここでは、過去15年間に二酸化硫黄で7人が死んでおり、 1980年1月から1995年10月の間に、火山ガスの吸引によって59人が病院で手当てを受けています。 死者の半数以上は、喘息の病歴がありました。 死因の分析結果にしたがって、二酸化硫黄の避難決定レベルが引き下げられ、 喘息や呼吸器系疾患を予防するために、曝露の危険に関する厳しい警報が観光客向けに出されるようになりました。 (Ng'Walali et al., 1999).
20世紀の火山からの二酸化硫黄放出に関連した死亡ならびに傷病事故
(BGVN 16:09; Hayakawa, 1999; Ng'Walali et al., 1999に基づく)
火山 | 発生日 | 死者数/ 傷病者数 |
詳細 |
---|---|---|---|
日本・阿蘇 | 1989年2月12日 | 死者1名 | 66歳の男性観光客 |
日本・阿蘇 | 1990年3月26日 | 死者1名 | 観光客 |
日本・阿蘇 | 1990年4月18日 | 死者1名 | 78歳男性観光客 |
日本・阿蘇 | 1990年10月19日 | 死者1名 | 54歳女性観光客 |
チリ・ハドソン | 1991年10月11日 | 嘔吐ならびに意識不明、気分が悪くなった住民数名 | 1つの谷で強い硫黄の噴気 |
1993年 | 死者1名 | ハレマウマウ・クレーターの駐車場において、硫黄への感受性が高い観光客が死亡 | |
日本・阿蘇 | 1994年5月29日 | 死者1名 | 69歳女性観光客 |
日本・阿蘇 | 死者2名 | 62歳と51歳の男性観光客。彼らが倒れる直前のレベルは5ppmに達していた。 |
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