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IVHHN Ash Collection Procedures.pdf
はじめに
火山灰採取用具
定常火山灰採取
噴火後の火山灰採取
試料へのラベル付け
採取後の手順
クラフト袋
参考文献
はじめに
火山灰採取時に推奨される手法は、その火山灰の何を調べるかという目的によって異なります。
健康影響を評価するには、溶出物を解析するとともに火山灰の粒径分布や組成を調べるとよいでしょう。
化学分析をするのであれば、火山灰を40℃以下で乾燥させましょう。
組成や粒径分布を分析する場合には、温度を気にする必要はありません。
(例えば、中毒学的観点での分析をするために)試料の溶出物や表面反応性を調べるのであれば、降雨や外気との接触時間などに関する噴火後の経過を正確に知ることが重要です。
必要な火山灰の量は、採取前に吟味しておく必要があります。
例えば、粒度分析や組成分析では、少量(10グラム以下)の火山灰しか必要としないかもしれませんが、中毒学的な分析をする場合、特に、試料を複数の組織で分け合う場合には、数キロが必要になる可能性があります。
下に示す手法は、災害評価や調査を行うそれぞれの状況に応じて調整する必要はありますが、
採取された火山灰試料は、粒度分析や組成・溶出物の同定、噴出物量や火山灰の堆積量の総計の見積もり(等層厚線図の作成)などに確実に利用できるようにするべきです。
火山灰採取用具
最も対費用効果が高い火山灰採取の手法は、プラスチックのトレイ(またはバケツ)を使うものです。
これらの容器は安価で、しかも、洗浄が簡単です。
トレイは、異物の混入や雨水のあふれ出しをさけるために、高い縁(5センチ以上)があるものを使います。
トレイは、相当量の火山灰を採集できるように十分大きいもの(理想的には0.1 m2以上)が必要です。
鳥や昆虫、植物などが混入することを確実に防ぐように、開口部に網をかけるとよいでしょう。
金属製のトレイは、雨水で濡れた場合に溶出物の成分に影響を与える可能性があるので、さけるべきです。
「フリスビーゲージ」のような商用の採集機材を使うこともできます。
フリスビーゲージは、底部に穴が開いた受け皿と、有機物による試料の汚染を防ぐために装着された発泡素材のトラップで構成されています。
試料は、ゲージの底部にある回集ビンに集められます。
このゲージには、鳥よけと、地面に突き刺して安定性を高めることができる(新式ゲージ用の軽量)三脚が装着されています。
フリスビーゲージは、降雨によって受け皿から回集ビンへと粒子が洗い流されるようになっています。
同じ製造業者によるISOゲージは、一定標準の性能を保証するISO基準ISO/DIS4222を満たしていますが、 発泡素材のトラップが付いていません。
これらの製品に関する情報は、インターネット上に掲載されています (参考文献の欄をご覧ください)。
火山灰の繰り返し分析
- 火山灰採取点のネットワークは、火山灰が分布する可能性がある地域全体を覆うように火山周辺に格子状に配置しましょう。
- 卓越する風向きには、特に注意を払う必要があります。 火山灰が非常に広範囲に分布する可能性がある場合は、火山から遠い距離では、少なくとも最も分布軸となる可能性が高い地域には採取器材を配置しましょう。
- 有機物や小規模噴火による噴出物、火山灰の風による再巻き上げ、雨水のあふれ出しなどをさけるために受け皿の中は毎日、きれいに取り除きましょう。
- 噴火後に受け皿の中に水がある場合は、火山灰と水の両方を袋に採取して、オーブンで乾燥させましょう。 受け皿の水を取り除こうとすると、健康被害の評価をする際に非常に重要な微細粒子も取り除かれてしまう可能性があります。
噴火後の火山灰採取
- 風や水、人間活動による微細粒子の再巻き上げを避けるため、降灰後は可能な限り迅速に試料を採取しましょう。
- 火山灰採取用のトレイをネットワーク状に配置していなかった場合は、噴火前は何もなかったことが明らかな平らな表面から集めましょう。草や土壌の上の火山灰を集めることは避けましょう。
- 草や土壌の場所でしか採取ができない場合は、悪影響を与えないように火山灰と地表面の境界部分の数ミリは残して、注意深く採取しましょう。
- 微細粒子が失われないように、採取中に火山灰に霧吹きしたり濡らしたりするという選択肢もあります(ただし、擾乱を受けていない粒子表面の元の状態を分析する必要がある場合には不適切です)。
- 大量の火山灰が降る場合は、30センチの断面を持つ下水管などを使ってコアを採取すれば、火山灰の代表的な断面を回収することができます。 この技法は、圧密された堆積物では特に効果的です。
- 火山灰は袋に保存します。紙製のクラフト袋でも密封可能なビニル袋でも構いません。 微細粒子はビニル袋の表面に付着しやすいので、私達はクラフト袋をお奨めします(クラフト袋の欄をご覧ください)。
試料へのラベル付け
噴火後の火山灰採取と繰り返し分析の両方で、次の事柄を記録しておく必要があります。
- 噴火時刻
- 採取時刻
- 採取場所(参照区分やGPS位置情報を含む)
- 火山灰が一回の噴火によるものか複数の噴火によるものかについての情報と、受け皿を最後に空にしてからの時間についてのメモ
- 利用した受け皿もしくは試料採取をした地表の表面積。火山灰の堆積量は単位面積当たりの質量という形で記録するのが最適
- 乾いているか、湿っているか、火山豆石や石質岩片、軽石、有機物などを含んでいるかといった堆積物の状態
- 堆積してから採取されるまでの試料の履歴(例えば降雨)に関する情報
- 火口からの距離
- D分布主軸がきちんと定義できる場合には、その軸からの距離
- 試料番号
採取後の手順
- オーブンに入れて40℃以下で乾燥させる。クラフト袋に採取した場合は、袋から取り出さずに直接オーブンに入れることができます。温暖な気候の場所では、火山灰をクラフト袋の中に放置しておけば、自然に乾燥することがあります。
- 火山灰試料の重さを量る。
- 安全と持ち運びのために、密封できる袋にいくつかに分けて保管します。 簡単に再密封できるジプロック袋がお奨めです。
クラフト袋
クラフト袋は、丈夫な茶色の紙袋であればどのような種類でも構いません。 火山灰採取では地球化学的な土壌採取のために特別にデザインされたものを、私たちは、お奨めします。 例えば、Siliconpak(www.charapak.co.uk)によって製造され、世界中で利用されている袋は、 防水テープを使った濡れに強いクラフト紙でできていて、濡れた試料の採集と、それが引き起こす乾燥にも耐えることができます。 この袋には3x5、4x8、5x10インチのサイズのものがあります。
参考文献
フリスビーゲージと、他の同様な器材に関しては下のサイトをご覧ください:
http://www.york.ac.uk/inst/sei/dust/mines1.html - フリスビーゲージを利用するための手順もここからダウンロードできます。
http://www.hanby.co.uk - フリスビーゲージ等の粉塵採取機器の製造元のウェブサイトです。
クラフト袋については: Siliconpak Ltd, UK
謝辞
この文書は、IVHHNの専門家メンバーによる研究班が執筆しました。IVHHNは関連会合へ支援をしていただいた英国リバーハルム財団に感謝いたします。
IVHHNは、ガイドラインに関するこの文書を精査していただいた下の方々にも感謝いたします。
Andrew Maynard博士(米国・国立労働安全衛生研究所、シニアサービスフェロー)
Costanza Bonadonna博士(米国・南フロリダ大学、火山学助教授)